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【ネタバレなし】ブックレビュー「六人の嘘つきな大学生」(浅倉秋成著/KADOKAWA)


よくできている話。面白かった・・・。

面白い話が読みたいと本屋さんで見つけた本、「六人の嘘つきな大学生」。

あらすじ

「ここにいる六人全員、とんでもないクズだった。」

急成長中のIT企業「スピラリンクス」が創業初の新卒採用を行い、最終選考に残ったのは六人。
最終選考はチームディスカッション、課題は「会社が実際に抱えている案件をどのように進めるか」のはずだった。
六人全員の内定を目指して、交流を深め準備を進めていた中、最終選考の課題が突然変更される。
課題は「六人の中で誰が内定にふさわしいか一人を決めること」。
仲間からライバルになった六人。
最終選考で待っていたのは、「〇〇は人殺し」の告発文が入った六通の封筒。
犯人は誰か、目的は何か-。

かんっぜんに購買層ではないと思われる私(初老BBA)が読んで楽しめるんだろうか・・・、
と不安になりましたが、本当に読んで良かったです。

一気に読めます。
と、言うより、一気に読みたくなります。

舞台の構成は、
「事件」が起こった最終選考の2011年、そして、その8年後の2019年の2部構成。
後半は最終選考の真実と六人のその後の人生について書かれています。
読者が気になるところ、「あの後、六人はどうなったんだろうか・・・」という不安も解消してくれます。

就活の最終選考、しかも「内定者一人」を六人で決めるという設定は、緊張感があります。
またインタビュー場面等の会話が多いことと、六人それぞれが抱く登場人物の印象の描写から、人物像がイメージしやすいです。
六人の大学生全員が「あぁ、こういう子いるよね。」と思えるキャラクターです。

そして、読み進めると「そうそう!そうなんだよね。」と思い出される就活時代の体験。
モリモリに盛られた就活生の自己アピール、
ベッタベタに塗りたくられた企業イメージ。

この本にはそのエピソードが書かれています。
就活生のバイトリーダー、サークル代表、ボランティアエピソード・・・、
もうこれは伝統芸。

私にも就職活動の時期がありました。
もう二十年以上も前です。

毎日毎日エントリーシート書いて、面接受けて。
いわゆる、ガクチカ(学生生活で力をいれたことはなんですか?)や長所短所質問、自己PR等、
奇をてらったことを言うと、変な雰囲気になりかねないし、
ありきたりな優等生的なことを言うと印象に残らない。
どうすればいいんだよ・・・、と困惑し続けました。
そして、会社側からの無茶ぶり選考課題。
自社製品の宣伝方法を考えろとか、新商品のアイディアとか・・・。
「知らんがな。タダで学生からアイデア貰ってんじゃないよ。」って思いながら答える日々。
そういえば、会社説明会行ったら、映画の前売り券を買わされそうになったこともありました。

今、思うと「あれってなんだったんだろう・・・。」と思うことばかり。
それこそが就職活動。

もし私が人事なら「誰に内定を出すか」(「一緒に働きたいのは誰か」)ですが、
矢代つばさです。
美人でちょっと大人っぽい。言いたいことは言う率直な性格です。

就活の懐かしさを味わい、犯人捜しの展開に緊張し、自分が人事だったら誰を選ぶか妄想する。

面白い作品です。


【余談】
作者のインタビューや登場人物たちの履歴書など、KADOKAWAのサイトで見れます。
そして、冒頭143Pが試し読みできます。
KADOKAWAのサイトはこちら

この「六人の嘘つきな大学生」、映画化する、と予想しています。


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